2018年06月12日

その会社、何年働けますか?――続「ブラック企業」が心配なあなたへ【カイシャの数字ここに注目!第2回】

テーマ:カイシャの数字

 働きやすくて業績も好調――そんな理想の就職先を「数字」から読み解く方法を探る、シリーズ第2弾。前回に続き「ブラック企業」が心配な就活生のために、二つの指標の読み方を解説します。世の中の変化が激しく、就職後も学び続けなければいけない現代、社員が成長できるカイシャを見極めるには、どうしたらいいのでしょうか。(朝日新聞社教育事業部ディレクター・市川裕一)

Key Figure#3 離職率

 社員を使い捨てにする「ブラック企業」を見抜く指標として、よく挙げられるのが離職率です。ふつう、ただ離職率というと、年初にいた社員のうち何人が年末までに辞めたかを表すことが多いようですが、就活の際には、新卒で入社した社員が3年間にどれだけ退職したかを表す3年後離職率が注目されます。当然、後者のほうが高く出ますので、両者を混同しないよう注意しましょう。

 グラフは、2014年春に大学を卒業して就職した人の3年後離職率を業界別に示しています。飲食サービス業等(宿泊業を含む)では半数を超える一方、電気・ガス業は9.7%、製造業20.0%、金融業や保険業は21.8%と低めです。全体をならして見ると32.2%、つまりほぼ3人に1人が、3年以内に最初の就職先を辞めていることがわかります。

 転職が珍しくない時代です。とはいえ、グラフに示した業界平均に比べ、3年後離職率が極端に高い企業には何か “ブラックな事情”があるかもしれません。若者雇用促進法では、過去3年間の新卒採用者数・離職者数を開示するよう、企業に求めています。各社の採用ホームページや「あさがくナビ」などの就活サイトで、数字を探してみましょう。

Key Figure#4 平均勤続年数

 離職率とともにチェックしたいのが、平均勤続年数です。こちらも若者雇用促進法の情報提供項目の一つになっていますが、採用ホームページなどに出ていなくても、上場企業なら調べる方法があります。今後、このコラムに繰り返し登場する情報源「有価証券報告書」です。主に投資家向けに企業の事業内容や財務諸表などを年1回、開示しています。金融庁の電子開示システム「 EDINET 」から誰でも無料で閲覧できますので、興味のある企業の有価証券報告書をパソコンで探してみましょう。

 写真上は、EDINETの「書類検索」の画面に「トヨタ自動車」と打ち込んだところです。検索ボタンをクリックすると、直近1年分の四半期報告書3件と有価証券報告書1件が表示されますので、有価証券報告書を選びましょう。「第一部 企業情報」→「第1 企業の概況」→「5 従業員の状況」をクリックすると、「(2)提出会社の状況」に、従業員数や平均年齢などとともに平均勤続年数(年)が「15.4」と表示されます(2017年3月期、写真下)。成長著しく若手社員を多数採用している新興企業や、持ち株会社(ホールディングス)などは短めに出る傾向がありますが、そうでなくて5年を切る企業には注意したほうがいいかもしれません。

研修など「学び」の機会は?

 「多くの若者が転職するいま、離職率が高いから一概にダメな会社とは言い切れません」と話すのは、女子学生向け就活サイト「Will活」で「ナツホさんの就活女子道」を連載中の行政書士、本多夏帆さん。自身もベンチャー企業に就職したものの半年で辞め、行政書士の資格を取って独立、開業しました。

 離職率が低くて平均勤続年数が長い企業は、居心地こそいいかもしれませんが、社員の平均年齢が高いなど、将来性に疑問符がつくこともあります。親世代のように、定年まで一つのカイシャに勤め上げることが美徳とは限りません。むしろ在職中に得た経験やスキルを糧に、よりよいカイシャへ移っていく時代ではないでしょうか。その意味でも、職場で多くを学べるかどうかが問われます。

 若者雇用促進法では就活生に開示すべき情報の1カテゴリーとして、「職業能力の開発・向上に関する状況」を挙げています。具体的には、(1)研修 (2)自己啓発支援 (3)メンター制度 (4)キャリアコンサルティング制度 (5)社内検定等の制度の有無や内容――の計5項目。こうした点は、実際に勤めているOB・OGや採用担当者に会った際、積極的に聞いてみるといいでしょう。

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